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中小企業にあたりまえの経営力を 


中小企業にあたりまえの経営力を
〜中小企業経営者を伴走し10年 「0.2人工の専門家」発表にあたって〜 Vol.35

中小企業の現場を前にすすめるために

日経ビジネス 7月5日号 『中小企業再編論の盲点 やみくも統合ではダメ会社が増える?』では、全国の中小企業をやみくもに統合するだけでは、強い企業は生まれない、国民性まで加味した再編プランが必要だとしている。国民性というのは「日本人は集まると足の引っ張りあいをする説」だとか。

この国民性に関する検証は、専門外でもあるため、ここでは省略させていただくが、ポイントは、やみくもに統合するだけでは、強い企業は生まれないをしっかり考える点にある。中小企業の現場に根ざした論点について、私なりに考えてみたい。

由紀ホールディングスさんのケースから

やみくも統合ではない、参考となるケースとして同記事でも紹介されていたのは、由紀ホールディングスさんのケースだ。私自身はクライアントの情報について当然機密であるため、ここからは由紀ホールディングスさんを事例とさせていただき、同社について公表されている記事、HPの2次利用をさせていただくことをご了承いただきたい。

1950年に創業、金属の切削加工、下請けの部品工場としてネジの製造などを手掛けていた由紀精密、しかし現社長である3代目の大坪正人社長が入社した当時は、深刻な経営状態にあったという。

ここから同社長は2つの大きな方向転換に舵を切る。

1つが、開発部門を立ち上げ長期スパンでビジョンを掲げ、事業を大きくシフトさせたこと、発信にも力を注ぐ。

そしてもう1つは、中小製造業をグループ化、持ち株会社のホールディングスを立ち上げたことだ。
それは、小さくても独自技術をもつ会社が集まり、コラボレーションが進むことであり、また広報、営業、人事、ファイナンスなど、中小の製造業で仕組みづくりが進みにくいインフラの整備に力を注ぐことを意味している。

中小の製造業には、フロント機能と頭脳機能がない

由紀ホールディングスさんのケーススタディの背景にある中小企業の課題は決して特別なものではないと私は考える。

ここで個人的なことを少しお話ししたい。私自身は社会に出てから、営業というフィールドを長く経験してきた。BtoBで営業とは、顧客との対話であり、ニーズを肌で感じるという重要な役割だ。そのニーズをもとに提案内容を考える。この考え方やアクションは、私の細胞の一部となっている。(もう随分長いのもので)。

それはBtoBだけであろうか。いや消費財であっても、売れ行きやレビューを通じて顧客と対話をしている。

さらに至極あたりまえのことだが、この市場を理解することが経営判断のベースである。企業の判断は、顧客との対話の上になりたつ。

しかし、コンサルタントとなって多くの中小企業へお伺し驚くケースが多くある。企業のこの顧客との対話機能が一切ない会社が多いということである。

下請けと一言でまとめて良いのだろうか?いやうちはファブレスで、OEMで、といった戦略的判断の中の一つであるなら良いのだが。

経営者と話をして、経営判断により現在の組織を選択したようには感じない。

経営者の行動にも思考回路にも、対話機能がないように思う。それにより自社に力がついていないことの認識もないか、あっても変えるために習慣から抜け出せるほど強くない。リスクテイクする判断ができない、ケースもある。

強い技術力や良い商品が重要で営業は不要だと言う人も多いだろう。

もちろん技術、製造インフラ、そして製品があって、広報や営業ができる。技術や商品は「ニワトリと卵」と呼ばれる一方である。しかし、それを正しい方向に導く機能が、発信、広報、マーケティングや営業などと呼ばれるものではないだろうか。これも「ニワトリと卵」のもう一方なのだ。

両輪が揃って、開発機能も入り経営の判断となるのだ。

未来型、創出型の技術やプロダクトであっても、同様だ。時代と市場を見渡し、開発し、同時にメッセージを発信する。ここに対話が生まれる。「ニワトリと卵」が揃う。

つまり、中小企業は企業の部分的な機能しか有していない。
中小企業には、フロント機能と頭脳の機能がないのだ。バックヤード(内側)の機能しかないといえる。

このことは中小企業経営者に責任があるのか?わたしは現場に入って、痛感していることがある。声を大にしていいいたい。これは産業構造の責任であり、大手の責任だと。そして商工会などは、いったい何をしているのか?銀行もである。税理士だってそうだ。

中小企業では、さらにこのフロントや頭脳の機能に、時間的またはコスト的リソースを配分出来ない。
それほどに圧迫され、経営者ですら現場にいるではないか!見ていて、心の中では涙が流れて止まらない。

スタッフ機能も不要な規模、人材難に陥る

前段落のフロント機能とは、顧客に接する機能、発信、広報、マーケティング、営業を指す。
さらに、スタッフ機能も有していない。これは組織規模という点で、必要ではない段階とも言える。人事・教育の担当者に専任が不要なのである。すべて社長が行っているケースがほとんどだ。

いま中小企業の大きな割合を占める、製造業、建設業、運輸業などが、人材難から経営の危機につながっているのも事実だ。

自分たちをいかに魅力的に見せるのが良いかを考える人がいない。前述のように、会社のビジョンも元請けにおんぶにだっこ、預けているのだから、理念を語る術もない。経営者が経営者にもなれないのだから、採用力を持てないことも残念ながら自然と言えるだろう。

だが、これでいいわけがない。

日本の中小企業にあたりまえの経営力を

日本の中小企業380万社のうち245万社の経営者が70歳以上を迎え、M&Aのニーズや廃業数の増加が叫ばれている。
そのような中で、中小企業経営者はどの方向へ舵を取るべきなのか。

わたしは、非常にシンプルなことが重要であり、解だと考えている。

あたりまえのことをできるように、あたりまえの経営力を持つことである。
M&A、グループ化、自社を強くする、どの方向であってもだ。

それは、ここまで延べてきたように、フロント機能(マーケティング、営業)を有し、経営判断力を上げることであり、最小限のスタッフ機能(広報、採用、教育)を持つことだろう。

ひとつの手法が、由紀ホールディングスさんでみるような、グループ化である。

0.2人区の専門家

弊社は、今年12期目に入る。
創業当時から数年は、あくまで営業力向上の支援をサービスメニューとしてきた。とはいえ、営業力とは広い。ビジネスモデル力であり、体制づくりであり、集客力であり、そして営業のスキルであり、プロセスマネージメントでもある。

それら全体の仕組みやスキルをアップし、自然なこととして結果が出てくる、・・・のだが、一部のクライアントではおかしなことが起きたのだ。仕事が増えれば良いと思うのだが、これがそうでもない。

他の仕組みが出来ていないことで、混乱が生じたのだ。

この混乱が、いまのサービスにつながった。

営業に追加されたのが
全体の仕組みづくりや教育。
そして
社長の仕事剥がし

まず、経営者の方針づくりのご支援。そして仕組みづくり。

仕組みが整うと、では
一人一人がどう成長すれば、混乱なく企業も成長するのか、を考える。
会社の成長の方向=方針にそった、部門から個人までの成長のステップも必要、人事評価制度を出口としてつくる。

結果、気がつくと、先程の中小企業が弱い、フロント機能、スタッフ機能、そして頭脳機能、の支援というサービスになっていた。

これが今般、弊社が新しくカタログ化した「0.2人区の専門家」サービスである。新メニューではない。現在は、普段から行っているご支援だった。

ビズラボ人見康子の経営者の伴走業とは、専任=1人工がまだ必要の無いフェイズに、それでも社長一人では、現場のトラブル対応に追われる時代を支援し、普通に経営者として闘っていただけるようにお手伝いする仕事である。

もちろん人事評価制度のみ、営業力向上、幹部育成や承継時の経営戦略立案といったお手伝いもしていることを補足したい。

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